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セフィロスはクラウドと呼ばれた子供の背を見送り、そしてアンジールの執務室の窓から見下ろしていた。
鮮やかすぎるほどの金色の髪はとてもよく目立ち、雑踏の中でもよほどの人込みでなければすぐに見分けることができる。
結局クラウドはアンジールのノースリーブと血濡れのままのジーパンを履いて帰って行った。
多少不格好であるが血濡れのTシャツを着て帰るよりはうんとましだっただろう。
「で、本当にお前があの子の指導をするのか?」
「お前が見込んだんだろう。なら、まず間違いない。それに、ウータイとの戦争も終わった、英雄はもう必要ないさ」
「さみしいことを言うな、英雄。おまえは看板役者だろう。」
からかうように小突くアンジールにセフィロスは笑みを返す。
セフィロスにとって英雄とは邪魔な名前でしかない。
だが、本気で英雄だと思っているわけではないアンジールやジェネシスに呼ばれるのはまた違ったイントネーションがあり悪くないと思っていた。
「お前も、今や看板役者の一人だろう」
「俺は裏方でいい、目立つのはお前やジェネシスに任せておくさ。」
「ずるいな、逃げるのか」
「逃げるが勝ちという言葉もある。」
言葉遊びを交わしあい、軽く肘で小突きあう。
そうしているうちにクラウドの姿は見えなくなっていた。
「それで、実際何があったんだ?」
「ん?なんだ、信じていないのか?」
「そういうわけじゃないさ。だが、鍛えていくにしても実はまぐれでしたなんてオチだったりしたら笑えんぞ。状況報告をしろと言ってるんだ」
よほど、気に入ったんだな、とアンジールは意外なものを見るようにセフィロスを見た。
基本的に世の中をガラスの中にあるジオラマのように遠くから見ているようなセフィロスが初めて自分から興味を持った。
今でこそセフィロスは自分やジェネシス、そしてザックスに直接顔を合せてはいないが興味を持ってくれている。
だが、こうして対等と呼べるまでに話せるようになるまでには随分と時間がかかった。
まるで今にも切れそうな糸のように張りつめ続けていたセフィロスにしつこく話しかけ続けて、ようやく心を開かせた。
そうしているうちに幼馴染だったジェネシスも輪のうちに加わり3人でつるむようになった。
「俺があの子に駆け寄るまでに要した時間は30秒から40秒。最初の目視ではモンスターの群れは10匹から15匹程度のように思えた。つまり戦闘時間は30秒から40秒、15匹と考えた場合2秒から3秒。的確に急所を狙っていたと考えられる。ナイフも使い込まれていた。掌を確認したが確かに本人が使っていたものらしい。」
「場数は相当数、まぐれではないということか。」
ぞくりと背筋の泡立つような興奮を覚えたセフィロスの気配にあてられてアンジールは横顔を伺い見た。
同行がいつもの数倍細くなっているのを見てアンジールは溜息をつく。
「殺すなよ。おまえは芽の出る朝顔さえ枯らしそうだ。」
「ふん、死んだら死んだでその時だ。」
その答えにアンジールはもう一つ大きなため息をついた。
「セフィロス…扱いを間違えるなよ。クラウド・ストライフは女の子だ」
「なんだと?」
わずかばかりの沈黙の後、セフィロスは目を見開いて問い返した。
珍しいものを見られたな、とアンジールはぼんやり考えつつ手元にカメラがないことが惜しいと思った。
「詳細を後からお前のパソコンに送ってやる。男と思って扱くとあっという間に壊れるぞ」
「・・・・・・了承した。」
自分の服では致し方ないとは思っていたが、やはり体系が隠れてわからなかったらしい。
さて、セフィロスがクラウドをどう扱うのか・・・見ものだなとアンジールはパソコンに向かう。
万が一失敗しそうなときは自分のもとへ引き取ればいいだろうと考えながら。
......data Save
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「アンジール、さん。一先ず服をお借りしたのですが」
でてきたクラウドを見て、アンジールはやはり大きすぎたか、と額を押さえた。
クラウドが今来ているのはソルジャーの制服でもあるニット(簡単には傷が入らないよう、繊維は特別製だ)のノースリーブなのだが・・・。
アンジールとクラウドでは体型が違いすぎて、ミニのワンピースのような状態だ。
一応腰の辺りをベルトで止めてみているが格好悪いことこの上ない。
でてきたクラウドに息を止めたのはセフィロスだ。
フワフワとした金色の髪、鮮やかな青い瞳・・・。
(ほんとうに、この子供がモンスターの群れを?)
「ん、ああクラウド。顔なら知っているだろう?」
促されるようにして顔を向けたクラウドもまた、息を詰まらせた。
惹かれて惹かれて、焦がれてどうしようもなかった人。
セフィロス
「は、はい・・・」
「アンジールから話は聞いた。期待の新人らしいな。」
「いえ、そんな」
「謙遜するな、クラウド。ナイフ一本でアレだけの数を片付けるのは、俺たちでも骨を折る」
「有難うございます。」
「君もあれか・・・?ソルジャー志望で」
「いえ、一応仕官となるつもりで、ソルジャーになる気はありません」
これまた珍しいとアンジールもセフィロスも眼を丸くした。
このぐらいの子供なら、大抵がソルジャーを目指し、適正試験に落ちて始めて他の進路を選ぶくらいなのだから。
「というよりも、なるのが難しいと考えています」
「その根拠は?」
「セフィロス、試験官でもあるまいしやめないか。」
仕事モードに入りかけたセフィロスを軽くいさめるアンジール。
それに拗ねたような表情を見せるセフィロスを見て、クラウドは「(あぁ・・・)」と感慨を覚えた。
クラウドが彼のこんな表情を見たのは、彼にお預けを食らわせた時だったか…。
「いえ、お気になさらないでください。自分の出身はニブルヘイムと言う村です。以前は神羅の社員の方もよく出入りしていたと聞きますが」
そういわれて思い当たることがあったらしいアンジールがああ、と頷いた。
「俺たち軍部のほうには直接関係はないが、あそこは魔晄の豊富な土地らしいからな。科学部門のほうがよく出向いていたと言う話は聞いたことがある。さすがに、俺もセフィロスもまだソルジャーとして活動していなかったがな。」
「それで、まぁニブルヘイムの村の人たちは皆黒髪に黒目の人が多くてどちらかと言うとウータイのほうの血が多く混ざっているそうなんです。そんな中、この金髪は目立つでしょう?」
苦笑しながら自分の髪を指差す。
「母は案外馴染んでいたようなんですが、自分はその、人付き合いが苦手で友達も作れず、一人でニブル山で遊ぶことが多かったんです。」
そこまで話すとなるほど、と納得したようにセフィロスが頷いた。
「ニブル山はソルジャーがいなければ一般兵では難しいといわれている。ソルジャーとなる原理としては一度に大量に魔晄を照射することだといわれているからな。魔晄の多いあの山で遊んでいた君は、いわば天然のソルジャーのようなものと言うことか。」
「そういうことです。ソルジャーとなるために魔晄を照射すると逆に体内の魔晄が多くなりすぎて、魔晄中毒になる可能性が強いと試験の際に言われました。」
因みにクラウドの話はあながち嘘でもないが、当然嘘である。
今のクラウドは体内にジェノバ細胞を宿し、本物のソルジャーと同程度の能力を所有している。
流石にそんなことまで言うわけにはいかないが。
「それなら、仕官を目指していこうって思ったんです。」
「そうか、頑張れよ。」
「ええ、有難うございます。」
前とは違う物語。
ここからが始まり・・・。
(セフィロス・・・もう、貴方を一人にしやしない)
神羅の社員達はギョッとしてアンジールと、その後を歩く血濡れのチョコボを凝視していた。
いや、アンジールは良い・・・彼は神羅の誇るソルジャーの一人なのだから。
だが・・・
その後ろを歩く小柄な少年?少女?はまた物凄く微妙な存在だった。
保護をして来たと言うには血濡れの割に怪我をした様子も見受けられないし、アンジールの親類縁者にも見えない。
ならあれはなんだろうと首をかしげる。
ここでアンジールの色小姓という発想が生まれないのは、ひとえに常日頃から彼に寄せられている信頼の賜物と言う物だろう。
これがジェネシスやセフィロスだったりしたならば「ああ、あの子・・・喰われるな」と哀れみと羨望と嫉妬の眼差しが向けられる。
「あの・・・サー・アンジール」
「ん?まだ入隊していないんだからアンジールで構わん」
「いえ、それはなんだか納まりが悪いと言うか」
「なんだそれは、その謙虚さを少しは俺の後輩や同僚に分けてやりたいよ」
アンジールはクツクツと笑って、彼の執務室兼仮眠室となっている部屋へクラウドを招き入れた。
部屋の中には綺麗に整頓された机と・・・やけに散らかり放題の机が一つ。
それがザックスの机だろうなと言うことは簡単に想像がついた。
「奥にシャワールームがあるからそこで血を落とすといい。その服は・・・まぁ、何か思い入れや思い出があると言うのならクリーニングにまわしては見るが」
「あ、いえ・・・もう血も乾いていますし帰ってから処分します。」
「それは・・・不審者だろう」
「でも、今日は替えを持っていませんし」
「俺の・・・は無理だな」
かといってやはりこの血濡れの服を着させて帰るのは如何な物だろうとアンジールは唸り首をかしげる。
クラウドはクラウドで(ザックスにいい人だとは聞いていたが、ここまでおせっか・・・いや、親身になられるとは)と考え込むアンジールを見てぼんやりそんなことを思っていた。
「いえ、あの・・・だから本当に大丈夫です。シャワーをお借りできるだけとてもありがたいので」
「そうか・・・一応その服は洗濯に回してみよう」
「洗濯って・・・まさか洗濯機ですか?」
「ああ、執務室は基本的に好きなように使ってもいいことになっているから、置かせてもらっているんだ」
ソルジャーが洗濯機・・・。
クラウドは唖然として言葉も出なかった。
++++++++++
アンジールの執務室にセフィロスが訪れる理由は片手の指で数えられる程度しかない。
1つ、普通に仕事の話
2つ、飲みに行く誘い
3つ、訓練の誘い
4つ、女から逃げている時
5つ目はそれ以外だが、生憎そのそれ以外と言う用事にお目にかかった事はない。
とにかく今日は、久方ぶりにアンジールを誘って飲みにでも行こうとセフィロスはその執務室を訪れたのだ。
しかし・・・。
「いない・・・?」
アンジールが鍵をかけずに執務室を出ると言うことは殆どない。
ほんの少し、所用で廊下に呼び出されても鍵をかけるのだ。
なぜかと問いかけたら、万が一賊の侵入を許したときに自分が敗れて、機密情報が沢山ある自分の執務室に押し入られては適わないからと答えた。
まず、ソルジャー1stであるアンジールが倒されることなど、万に一つどころか億に一つもありえないだろうし、そもそも怨恨でここを訪れる物は書類に用はないだろうし、その上このフロアに来ることさえそれこそ万に一つの確立でしかないだろう。
そう言ってもアンジールは用心するに越した事はないと言うのだ。
そのアンジールが鍵もかけずに外出・・・?
絶対にありえない、と思ったとき物音がした。
シャワールームのあるほうからだ。
なんだシャワーを浴びていたのかと納得したセフィロスだったが、シャワールームとは違う、仮眠室から姿を現したアンジールを見て軽く首をかしげた。
「アンジール・・・?」
「なんだ、セフィロス来ていたのか。少し待っていてくれ。」
「なんだ、とは嬉しい言い草だな。お前の秘蔵のハリネズミが来ているのか?」
「ザックスじゃない。来期入隊予定の子供だ。」
育て甲斐があるとばかりに笑うアンジールを見てセフィロスが思ったのは「イケニエが一人」と言うことだった。
アンジールの扱きは生半可な物ではない。
現に今ソルジャー1stにすべく扱いているザックスはアンジールが模擬戦で目をつけ、特待制度を利用し手元においているのだ。
おかげでザックスは異例の速さで昇進したが、病院送りになった回数も新記録を樹立している。
「モノになりそうか?」
「弱いモンスターだったが、一つの群れを潰した。」
ナイフでな、と付け加えたアンジールにセフィロスは珍しく目を細めた。
「お前がそうまで言うなら、俺が育ててみるのも悪くないな。」
「お前が・・・?一つ聞いてもいいか?セフィロス」
「なんだ?」
「朝顔の苗をちゃんと育てられるのか?」
水と肥料だけではダメなんだぞと笑われ、セフィロスは逆に眉間に皴を寄せるのだった。
...... data Save
近場のモンスター討伐の任務の帰り。
といってもそれは新兵訓練の一環であってアンジールにはまったく苦にもならない、むしろ不完全燃焼気味な任務だった。
でもてあます力を少しでも発散するようにちらほら現れるモンスターを退治しながら一人ミッドガルまで歩く。
どちらにしても予想外に怪我人が多く移動用のトラックのスペースに詰められるのも少し遠慮したいところであったから単独行動を許されたの幸いだった。
背中に背負うバスターソードではなく神羅の支給品である剣を振ってモンスターの血を落とす。
もうミッドガルも見えることだしそろそろ寄り道もやめてまっすぐ帰るかと顔を上げたアンジールはぎょっとした。
遠めではっきりとはしないが明らかにモンスターが子供が襲われている。
しかも1匹どころではない。
数匹の群れで襲い掛かっているのだ。
おそらくは偶然か何かであの子供があの群れのモンスターを倒してしまって、ほかのモンスターを怒らせたのだろう。
「まったく。どうしてこんなところに子供が一人で」
とにかく助けなくてはいけないだろうとアンジールは子供のほうへ向かって走り出した。
だが・・・
アンジールが子供の元へたどり着いたとき、すべては終わった。
子供の死で終わったのではない、モンスターがすべて倒されて終わったのだ。
「参ったな、また服がぼろぼろだ」
子供は心底困ったようにそうつぶやいた。
たしかに、もう一度着ようと思えないほどに子供の服はモンスターの返り血によってどろどろに汚れ異臭を放っていた。
って、そうではない!
「坊主!いや・・・女の子?」
「え?」
振り返った子供の顔は中性的過ぎてわからなかった。
いや、だが少女がこのモンスターの群れを一人で討伐したとはあまり考えたくない・・・。
だが少年というには少しばかり体つきが丸いようにも見えた。
「いや、どっちでも良いか。怪我はないか?モンスターに襲われていたようだが。」
「え、あの・・・はい、大丈夫です。」
一方の子供、クラウドはこの人物をどこかで見たことがある、と内心首をかしげていた。
いったいどこで見たのだったろうか。
着ている衣服は間違いなくソルジャーのもので、淡く魔鉱の色を放っている瞳がそれを如実に証明していた。
クラウドのその無遠慮な視線に気づいたのだろう、アンジールは苦笑して自身を指差した。
「たぶん、察しているように俺はソルジャーだ。アンジールという」
その名前にクラウドははっとした。
直接あった事はなかったが、ザックスの尊敬していた人間だった。
そして神羅内でも有名で、慕われていた人物だった。
「申し訳ありませんでした。自分は来期入隊予定のクラウド・ストライフと申します。」
敬礼は習っていないためあえて行わないが、姿勢を正してアンジールに向き直ると、アンジールは驚きのあまりか目を見開いていた。
「ら、来期というと9月の入隊式典か?」
「はい。」
今度はアンジールのほうが不躾にクラウドを眺めてしまった。
軍人となるには細すぎる体躯に整いすぎた顔立ち。
そういった意味での餌食になるのは間違いないだろう。
「あの、なにか・・・?」
「いや、その・・・もう入隊は決まっているのか?」
「はい。当面は士官学生としてなので実戦に出ることはありませんが。」
「その、試験官でもないのに聞くのは無粋だと承知しているが、理由を聞いても良いだろうか?」
アンジールの問いかけにクラウドは苦笑した。
おそらく馬鹿にしているのではなく心配しているのだろうと。
確かにクラウドは兵士たちの中に放り込むにはあまりにも不安要素が多すぎる存在だ。
「大切な人たちを、守るためです。」
「両親か?」
「母も当然そうですが・・・ほかにもたくさんあるんです。失いたくないものが」
クラウドのその答えに、アンジールも本気だと感じたのだろう。
これ以上の問いかけは無粋とばかりに肩をすくめた。
「そうか、がんばれよ。」
「イエッ「おっと、まだ部下ではないから、返答にサーはいらない」・・・わかりました。」
生真面目すぎる性分、聡明なまなざし。
アンジールがよく面倒を見ているあの青年にも分けてやりたいなどと思ってしまった。
「だが、まあ・・・その格好で帰すわけにも行かないな」
「え?いや、お気になさらずに。」
「なに、遠慮はいらん。ここで出会ったのも何かの縁だ、一足先に神羅ビルの中を見るのも悪くないだろう」
「いえ、ですが」
「運も実力のうちだ。体験入隊も悪くないだろう」
アンジールの人好きのする笑みにクラウドははっきり断ることもできず、そのままずるずると神羅ビルへ引きずられていってしまった。
......data Save
1年後、クラウドはミッドガルのゲート前にいた。
持ち物はナップザックのみ。
着の身着のままといったようなぼろぼろの格好で、ミッドガルの象徴でもある神羅ビルをにらみつけていた。
正直、とても女の子のするような格好ではない。
あれこそがすべての災厄の始まりだ。
クラウドはこの1年。
どうにかあの惨劇を繰り返さない方法を考え続けていたが、何一つ思いつくことができなかった。
結局どこかでイレギュラーが生じてしまえばそれに対応する方法がないからだ。
ならば自分が強くなるしかない。
そう思ってクラウドは母親を説き伏せて神羅士官学校の入隊試験を受け、半年前にニブルヘイムを後にした。
(以前よりも説得することが難しかったのは、自分の性別が大きく関係しているせいだろう。)
そして、クラウドは海を渡るとき、そして湿地帯を越えるときを除いて、ここまで徒歩の旅を続けてきた。
もちろんモンスターを倒しながら。
おかげで路銀もたんまりたまり、懐はだいぶ暖かい。
クラウドは秋季入学の士官生であるから入隊式までは後1ヶ月ほどの時間がある。
「どこかでアルバイトでも探すか。」
もう一度カーム当たりまで戻っても悪くはないが、少しでも情報がほしい。
それにこのどろどろの服や、髪の毛だって少しは整えたい。
プレートの下には確か安い宿屋があったはず、とクラウドは見当をつけると迷わず足を動かし始めた。
懐かしい、7番街スラムへ
++++++++++
「まぁ、当然なんだけどな。」
元、いやこれからセブンスヘブンとなるのだろう店の前に立ちクラウドは肩をすくめた。
そこはただの空き地、まぁ当然のことなのだが。
「でもそれ以外はあんまり変わらないんだな。」
誰に話しかけるわけでもなく、クラウドは辺りを見回しながらつぶやく。
七番街へ足を向けたのは決意を固めるためだ。
なんとしても運命を変えて見せると。
この場所をプレートの下敷きなどにしてたまるものか、と。
クラウド自身にここに住む彼らへの愛着はない。
だが、あんなつらい光景を何度も繰り返してはならないと、そう思うのだ。
クラウドは少し奥まで足を進めてみた。
もとは別のプレハブ小屋が立っていたらしい跡があるのがわかる。
これから誰かがここに居酒屋を立てるのだろうそしていつかそこにティファのいるアバランチがそこの主となる。
いや、バレットのアバランチは元あったアバランチの残党といってもいいかもしれない。
クラウドは踵を返し歩き出す。
今を生きるこの場所を、この場所に生きる人たちの姿を胸に刻み付けて。
悲劇を繰り返しはしないと心に誓って。