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近場のモンスター討伐の任務の帰り。
といってもそれは新兵訓練の一環であってアンジールにはまったく苦にもならない、むしろ不完全燃焼気味な任務だった。
でもてあます力を少しでも発散するようにちらほら現れるモンスターを退治しながら一人ミッドガルまで歩く。
どちらにしても予想外に怪我人が多く移動用のトラックのスペースに詰められるのも少し遠慮したいところであったから単独行動を許されたの幸いだった。
背中に背負うバスターソードではなく神羅の支給品である剣を振ってモンスターの血を落とす。
もうミッドガルも見えることだしそろそろ寄り道もやめてまっすぐ帰るかと顔を上げたアンジールはぎょっとした。
遠めではっきりとはしないが明らかにモンスターが子供が襲われている。
しかも1匹どころではない。
数匹の群れで襲い掛かっているのだ。
おそらくは偶然か何かであの子供があの群れのモンスターを倒してしまって、ほかのモンスターを怒らせたのだろう。
「まったく。どうしてこんなところに子供が一人で」
とにかく助けなくてはいけないだろうとアンジールは子供のほうへ向かって走り出した。
だが・・・
アンジールが子供の元へたどり着いたとき、すべては終わった。
子供の死で終わったのではない、モンスターがすべて倒されて終わったのだ。
「参ったな、また服がぼろぼろだ」
子供は心底困ったようにそうつぶやいた。
たしかに、もう一度着ようと思えないほどに子供の服はモンスターの返り血によってどろどろに汚れ異臭を放っていた。
って、そうではない!
「坊主!いや・・・女の子?」
「え?」
振り返った子供の顔は中性的過ぎてわからなかった。
いや、だが少女がこのモンスターの群れを一人で討伐したとはあまり考えたくない・・・。
だが少年というには少しばかり体つきが丸いようにも見えた。
「いや、どっちでも良いか。怪我はないか?モンスターに襲われていたようだが。」
「え、あの・・・はい、大丈夫です。」
一方の子供、クラウドはこの人物をどこかで見たことがある、と内心首をかしげていた。
いったいどこで見たのだったろうか。
着ている衣服は間違いなくソルジャーのもので、淡く魔鉱の色を放っている瞳がそれを如実に証明していた。
クラウドのその無遠慮な視線に気づいたのだろう、アンジールは苦笑して自身を指差した。
「たぶん、察しているように俺はソルジャーだ。アンジールという」
その名前にクラウドははっとした。
直接あった事はなかったが、ザックスの尊敬していた人間だった。
そして神羅内でも有名で、慕われていた人物だった。
「申し訳ありませんでした。自分は来期入隊予定のクラウド・ストライフと申します。」
敬礼は習っていないためあえて行わないが、姿勢を正してアンジールに向き直ると、アンジールは驚きのあまりか目を見開いていた。
「ら、来期というと9月の入隊式典か?」
「はい。」
今度はアンジールのほうが不躾にクラウドを眺めてしまった。
軍人となるには細すぎる体躯に整いすぎた顔立ち。
そういった意味での餌食になるのは間違いないだろう。
「あの、なにか・・・?」
「いや、その・・・もう入隊は決まっているのか?」
「はい。当面は士官学生としてなので実戦に出ることはありませんが。」
「その、試験官でもないのに聞くのは無粋だと承知しているが、理由を聞いても良いだろうか?」
アンジールの問いかけにクラウドは苦笑した。
おそらく馬鹿にしているのではなく心配しているのだろうと。
確かにクラウドは兵士たちの中に放り込むにはあまりにも不安要素が多すぎる存在だ。
「大切な人たちを、守るためです。」
「両親か?」
「母も当然そうですが・・・ほかにもたくさんあるんです。失いたくないものが」
クラウドのその答えに、アンジールも本気だと感じたのだろう。
これ以上の問いかけは無粋とばかりに肩をすくめた。
「そうか、がんばれよ。」
「イエッ「おっと、まだ部下ではないから、返答にサーはいらない」・・・わかりました。」
生真面目すぎる性分、聡明なまなざし。
アンジールがよく面倒を見ているあの青年にも分けてやりたいなどと思ってしまった。
「だが、まあ・・・その格好で帰すわけにも行かないな」
「え?いや、お気になさらずに。」
「なに、遠慮はいらん。ここで出会ったのも何かの縁だ、一足先に神羅ビルの中を見るのも悪くないだろう」
「いえ、ですが」
「運も実力のうちだ。体験入隊も悪くないだろう」
アンジールの人好きのする笑みにクラウドははっきり断ることもできず、そのままずるずると神羅ビルへ引きずられていってしまった。
......data Save
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1年後、クラウドはミッドガルのゲート前にいた。
持ち物はナップザックのみ。
着の身着のままといったようなぼろぼろの格好で、ミッドガルの象徴でもある神羅ビルをにらみつけていた。
正直、とても女の子のするような格好ではない。
あれこそがすべての災厄の始まりだ。
クラウドはこの1年。
どうにかあの惨劇を繰り返さない方法を考え続けていたが、何一つ思いつくことができなかった。
結局どこかでイレギュラーが生じてしまえばそれに対応する方法がないからだ。
ならば自分が強くなるしかない。
そう思ってクラウドは母親を説き伏せて神羅士官学校の入隊試験を受け、半年前にニブルヘイムを後にした。
(以前よりも説得することが難しかったのは、自分の性別が大きく関係しているせいだろう。)
そして、クラウドは海を渡るとき、そして湿地帯を越えるときを除いて、ここまで徒歩の旅を続けてきた。
もちろんモンスターを倒しながら。
おかげで路銀もたんまりたまり、懐はだいぶ暖かい。
クラウドは秋季入学の士官生であるから入隊式までは後1ヶ月ほどの時間がある。
「どこかでアルバイトでも探すか。」
もう一度カーム当たりまで戻っても悪くはないが、少しでも情報がほしい。
それにこのどろどろの服や、髪の毛だって少しは整えたい。
プレートの下には確か安い宿屋があったはず、とクラウドは見当をつけると迷わず足を動かし始めた。
懐かしい、7番街スラムへ
++++++++++
「まぁ、当然なんだけどな。」
元、いやこれからセブンスヘブンとなるのだろう店の前に立ちクラウドは肩をすくめた。
そこはただの空き地、まぁ当然のことなのだが。
「でもそれ以外はあんまり変わらないんだな。」
誰に話しかけるわけでもなく、クラウドは辺りを見回しながらつぶやく。
七番街へ足を向けたのは決意を固めるためだ。
なんとしても運命を変えて見せると。
この場所をプレートの下敷きなどにしてたまるものか、と。
クラウド自身にここに住む彼らへの愛着はない。
だが、あんなつらい光景を何度も繰り返してはならないと、そう思うのだ。
クラウドは少し奥まで足を進めてみた。
もとは別のプレハブ小屋が立っていたらしい跡があるのがわかる。
これから誰かがここに居酒屋を立てるのだろうそしていつかそこにティファのいるアバランチがそこの主となる。
いや、バレットのアバランチは元あったアバランチの残党といってもいいかもしれない。
クラウドは踵を返し歩き出す。
今を生きるこの場所を、この場所に生きる人たちの姿を胸に刻み付けて。
悲劇を繰り返しはしないと心に誓って。
まだエアリスと話していたかったが、クラウドには確かめなければならないことがある。
ニブル山にある魔鉱炉の奥にいるジェノバ。
確かめて今のクラウドに何ができるというわけではないが…。
エアリスにそういうと、エアリスは悪戯っぽく笑って
『星が力を貸してくれる』
と、クラウドに告げた。
どういうことかと試しにケアルを掛けてみる。
するとマテリアもないのにクラウドの体はあの魔法をかけたとき独特の光に包まれ、ここにくるまでに付いた傷がすべて癒されてしまった。
「すごい・・・」
『クラウドにも星の声が聞こえるようになったから』
「でもそれはセトラの民だけじゃ・・・」
『ちがうよ、セトラの民だから星の声が聞こえるんじゃなくて、星の声が聞こえる人が、セトラの民』
つまりは進化の過程で人が失ったもうひとつの感覚。
「ありがとう、エアリス・・・今度こそ俺は、セフィロスを・・・ザックスをエアリスを守り抜いてみせる!」
『うん。私も、応援してる。頑張って、クラウド』
にっこりと笑うエアリスにクラウドも笑みを返し、洞窟を後にした。
ライフストリームの帯が名残惜しそうにクラウドにまとわりつき、その姿を見送る。
++++++++++++++++++++
そこからの道程はそれほど厳しいものでもなかった。
先ほどケアルをかけたことも幸いしたのだろう。
そんなわけで扉を開くことも容易だった。
まぁ・・・つまりはサンダーで壊れない程度にロックシステムをショートさせたわけだ。
重い扉を何とかこじ開け、記憶にある道をたどる。
今も稼動はし続けているが、実験機のような扱いのこの魔鉱炉には調査もほとんど入っていないらしく埃だらけだった。
目視した限りでは侵入者を感知するシステムもない。
あったところで先ほどのショートで麻痺してしまっているだろうが。
クラウドはナップザックから取り出したペンライトで辺りを照らしながら奥へ奥へと進む。
魔鉱炉を動かす動力はおそらく別回路なのだろう、
モンスター、いや元は人間だったモノたちを封じ込めるカプセルだけが不気味に光を放っていた。
本当ならここで彼ら全員をカプセルから出し、人間であるうちに殺すか・・・
あるいはもっとほかの方法で彼らを救うべきなのだろう。
だがそんなことをしてもいずれ来るだろう調査隊に不信感を与えるだけだ。
今度もまた、クラウドが調査隊に加えてもらえるという保証はない。
「ごめん・・・」
カプセルの中で揺らめく魔鉱・・・ライフストリームが『ごめん』と応えてくれた気がした。
クラウドはおくにある扉を見据えて階段を上る。
以前正宗でさえ斬り開くことのできなかった扉だ、今のクラウドには開けられそうにもなかった。
強い魔法を使えば開ける事ができるかもしれないがそれではこの施設ごとふっとばしかねない。
(『星が力を貸してくれる』)
ふと、エアリスの言葉を思い出した。
一か八か、やってみる価値はある。
クラウドは扉に額を押し付け、祈るような気持ちで星に呼びかけた。
ジェノバを、封じたい、容易に手が出せないように。
強く強く祈り続ける。
そして
祈りは届いた。
扉の隙間から冷気が漏れ出し、扉には霜が立つ。
心なしかその空間も冷え始めてきた。
クラウドは扉から1歩2歩はなれる。
それと同時に扉を氷が包み込んだ。
「これなら、ファイガでも簡単には溶かせない。」
クラウドは小さくありがとう、と呟いて扉を見つめた。
さっきから胸がざわめくのはおそらく
「ジェノバ細胞・・・」
あの時代でクラウドの体を侵していたジェノバ細胞は今も健在らしい。
リユニオンを望んでいるのだろう。
クラウドのこの体はライフストリームに一度溶けて、ライフストリームから再び生まれたのか。
クラウドは震える腕を押さえつけ扉を強くにらんだ。
「俺は・・・お前なんかに負けない」
......data Save
クラウドは耳を、目を疑った。
なぜなら、マテリアの泉でクラウドを迎えたのは、懐かしい亜麻色の髪の
「エアリ・・・ス・・・?」
そう、クラウドの目の前で胸を貫かれたエアリスだった。
『久しぶり、クラウド。』
「エアリス・・・本当に」
『ええ。本当は私のほうからクラウドを迎えにいこうと思ったんだけど、クラウド 自分から来てくれた。』
エアリスはクラウドの記憶の中にある、そのままの笑みを向けてくれた。
「エアリス・・・どうなっているんだ?俺は、セフィロスを倒したはずじゃ・・・星は救われたんじゃないのか?」
『うん、星は助かった・・・でも、大事なものを・・・助けられなかった』
「大事なもの?」
不思議そうに問いかけたクラウドに半透明の、幽霊のような姿をしたエアリスが手を伸ばし、頬をなでた。
『クラウドの、心・・・助けてあげられなかった。』
「エアリス、そんなもの・・・」
『とっても、とっても大事なもの。クラウド、苦しかったんでしょ?だから、私たち、がんばったの。』
「私たち?」
『うん、星に溶け込んだ・・・星の記憶の私たち。クラウド、ライフストリームに落ちたとき、思ったでしょう?もう一度』
「・・・戻れたなら」
呆然としたようにクラウドはつぶやく。
確かに願った・・・。もう一度、戻れたなら、と。
もう一度戻れたなら、今度こそ、守り通したいと。
『だから、星から、クラウドにご褒美』
「ごほうび・・・」
『星もがんばるから、クラウドもまた、頑張ろうって』
「でも、じゃあ、また星は・・・っ」
『大丈夫、今度は私も、星を守るから。ジェノバの好きにさせない。だからクラウド、幸せになって。ね?』
「で、でも・・・エアリスは・・・?」
『私は大丈夫。私は消えちゃうけど・・・”私”は消えないから。』
「エアリス・・・」
『っもう!さっきからクラウド、私の名前しか読んでない』
「だって、会えるなんて・・・やり直せるなんて・・・」
『でも、次はないよ?これで最後。だからクラウド、頑張らなきゃ。幸せになるために』
にっこりと、エアリスはクラウドの好きだったあの笑顔を浮かべる。
見ているだけで、人を幸せにできるようなあの笑顔を。
『がんばれ、クラウド』
「ああ!頑張る、今度こそ。」
クラウドはこぼれる涙を抑えられず、こぶしでぬぐった。
++++++++++
「ところで、エアリス」
『なぁに?』
「何で俺、女になってるんだ?」
『えーっと、せっかくだからよりいっそう幸せになれるようにって思ったの。』
「よりいっそうって」
『だって、クラウド、セフィロスがすきなんでしょ?だったらやっぱり夢は結婚かなぁって』
「けっっけけkっ!」
ボッとクラウドの顔が真っ赤になる。
それを見てエアリスは、またくすくすと笑った。
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ナイフが重いということにクラウドは驚いていた。
だがこの細腕では仕方がないだろうと舌打ちをひとつ鳴らしながらクラウドは襲いくるモンスターをそのナイフ一本で片付けていった。
ナイフは重く疲労度も激しいが、体は思う以上にスムーズに動いていた。
これが実践経験のを経た差というものだろうか。
肉体的な経験はほとんどないが、戦闘の知識が多いか少ないかでは大きな違いがある。
それに、あの旅のころに比べてモンスターたちも落ち着いていた。
なんというべきか・・・むやみやたらと襲い掛かってくるものはそういない。
ニブルウルフも遠巻きにクラウドを眺め縄張りに入ってこないかどうか監視しているだけだ。
「ジェノバ、か・・・」
関係ないわけではないだろう。
殺気に当てられて凶暴になるというケースがないわけではない。
かれこれ2時間ほど歩いているが、ようやく中腹を越えたあたりだろうか。
頂上付近に目を向ければ、すべての始まりとなったあの魔鉱炉のシルエットが見える。
「確かめないと」
クラウドはさらに足を進めようと一歩を踏み出そうとした。
だがそれを引き止めるかのように緑白色の光の帯がクラウドにまとわりついた。
「ライフストリーム?」
まるでクラウドを呼ぶかのように光の帯が洞窟のほうへと流れていく。
クラウドはそれを無視することができずに帯びに導かれるまま歩き出した。
「これは・・・」
そこは洞窟全体がマテリアでできているといっても過言ではない空間だった。
不思議な光を放つ鉱石の間を縫うようにライフストリームの流れは奥へとクラウドを導いていく。
歩き続けたクラウドを迎えたのは地底湖のような空間だった。
「ライフストリームの・・・泉?」
『おかえりなさい、クラウド』
響いたのは懐かしい・・・鈴を転がすような女性の声だった。
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